婚活
でも同じ会社といっても従業員数も多いし部署も違うから、社内でも滅多に会わない。稀に会うとしたらランチの時か、仕事が終わって飲みに行って、同じ店に偶然居たとかその程度だ。

ただ和磨の情報は、結構入ってくる。何せ和磨は、朋子と同じ部署だから。でもそんな朋子も、和磨には目もくれない。タイプじゃないんだそうだ。

私もそう。弟の友達は所詮、 弟の友達としてしか見られない。

「何?和磨って、そんなに会社でブイブイ言わせてんの?彼女にチクってやろう。怪しいよな?でも社内は、なるべくならやめとけ。ドツボに填って、抜け出せなくなるぞ」

「裕樹。真に受けるな、バーカ!」

プッ。

和磨の奴、誤魔化すのに必死だ。

「ムキになるあたり、益々怪しいよな?」

「しつこいぞ、裕樹」

「朝から 騒がしいわね 和君どうしたの?」

すると和磨が、ドッとソファーに砕けるように横になった。

「おばさん。その和君っていうの、もう勘弁して下さいよ。和磨でいいですから」

「あら、そう?でもやっぱりおばさんからしたら、和君は和君よぉ。おしめしてる時から、知ってるんだもの」

母がテーブルに座っている私の前に朝食のおかずを置いてくれたので、席を立ってトーストを焼きながらリビングを覗くと、母の言葉に和磨がガックリ項垂れている。

ここはひとつ、茶化してやるかな。

「だいたい、何で和君が家にまだ居るのかなぁ?」

すると、和磨がムッとしながら起きあがり、私を横目で睨みつけた。

「珠美まで言うんじゃない。朝ご飯ご馳走になって、これから帰るとこ」

「ふ~ん……」

パンが焼けたので、バターを塗り終えるとトーストを咥えながら新聞を広げた。

「いいよな。座れば黙っててもご飯が出てきて。これじゃ、珠美は一生実家ラブで結婚出来ないんじゃねぇの?」

ズキッ。

それを言うな、それを。

そうなんだよね……。わかってはいる。手伝ったりもたまに気が向けばするけど、基本、 家の事は母親任せ。家事とつくものは、やっても自分の部屋の掃除ぐらい。

一応、気持ち程度の2万円は家に入れてるけど、残りは飲めや歌えや三昧。大した貯金もなく今日に至る。

でもやっぱり貯金とかないと、結婚してから大変なのかなぁ。よく言うへそくりとか、私の経済観念からいって、絶対出来そうにないだろうし。

「おばさん、ご馳走様でした」

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