婚活
寝入りばなの半分夢の世界にいる私はそんな和磨が何を思い、どんな表情をしていたのかさえ知る由もなく、それどころか翌朝起きて驚いてしまった。
頭痛い。夕べ、そんなに飲んだっけ?喉乾いたなぁ。やっぱり、飲み過ぎか?伸びをしながら階段を降りてキッチンに向かおうとしてリビングを通ると、居るはずのない和磨がソファーで寝ながら新聞を読んでいた。
うわっ。
思わず伸ばしていた両手を下ろし、和磨の前に立った。
「何で、和磨が居るのよ?」

「ハッ?何だ、その傲慢な態度は。珠美が勝手に昨日一人で酔っぱらって、階段も上れずに俺が部屋まで連れてってやっただろ?だから玄関の鍵締められないから、仕方なく俺が泊まったんジャン」
「……」
階段を上れなかった?そんなに飲んだの?私……。
「何?珠美、覚えてないのかよ」
「全く覚えてない」
恥ずかしいのと、いくら相手が和磨でも酔っぱらった勢いで醜態晒してないかが気になって、何気なくキッチンに向かい冷蔵庫を開けて麦茶を出して飲みながら平静を装った。
「わ、私、何か言ってた?」
グラスを持ちながらリビングに戻り、さり気なく和磨に尋ねると、すると和磨は開いていた新聞を閉じて意地悪そうな笑みを浮かべて見せた。
「な、何よ?」
麦茶を飲みながら、和磨の反応を窺う。
「和磨ぁ。和磨ぁって、馬鹿みたいにうるさかった」
「ゴホッ、ゴホッ」
危うく麦茶を吹き出しそうになって、慌てて飲み込み咽せてしまった。
「な、何言ってんのよ。 でまかせ言わないで」
「信じる、信じないは、珠美の勝手。帰るわ」
ホントなの?そんな事、言ってたの?
私……。
「朝ご飯、食べていけば?」
「いい。用事あるから」
玄関に向かいながら、和磨が言い放つ。
「さては、デートだな?」
「まぁ、そんなところ」
「お盛んな事で!」
嫌味っぽく、言ってやった。きっと堪えないだろうけど……。
「仕方ないだろ?」
仕方ない?
「珠美。ジャンケンのパー出してみろよ」
エッ……。
「ん?」
言われた通り、右手でパーを出す。
「掌を胸の方に向けて、指先を左側に向けて」
「これでいいの?」
「パーにしたままで、親指が上になってるだろ?」
「うん」
これが、何だって言うの?
「親指が10代。人差し指が20代。中指30代。薬指40代。小指50代」
はぁ?
「何の事よ?さっぱりわからないんだけど?」
「男の元気印」
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