婚活
「あらっ、もう帰るの?まだゆっくりしていけばいいのに」

「お袋。そんな社交辞令、和磨には通用しないから。そんな事言ったら此奴、1日中ここにいるぜ?」

「そうそう、和磨は遠慮ってものを知らないから。痛っ……」

和磨が、私の後頭部を叩いた。

「何すんのよ」

「あとで画面見せろよ?俺が品定めしてやるから」

はぁ?

トーストを咥えながら和磨を見上げると、不適な笑みを浮かべている。きっと未来王子の画面のことを言ってるんだ。そうは、いかないんだから。

「可もなく不可もなく、結構でございます」

「何だ?その日本語」

呆れ顔でそう言うと、笑いながら和磨は玄関の方へと消えていった。

まったく裕樹といい、和磨といい、どうしてこうも、勘が鋭いんだか。


「ご馳走様。ちょっと目薬買いに行ってくるけど、お母さん。何か買ってくるものある?」

「それじゃ、タマネギ買ってきてくれる?」

「ラジャー。あとはいい?」

「姉貴、アイス」

「自分で行け。おっ!それとも車出してくれるなら、アイスご馳走してやるけど」

交換条件としては、悪くないな。

「面倒だから、いいや」

はい?

面倒だからとか、まったく若さのない奴め。

お財布だけ握りしめ玄関を出ると、天気の良い休日特有の布団を叩く音や、洗車をしているホースから水が流れる音など、あちらこちらから聞こえてくる休日の音を聞きながらスーパーへと向かった。

しかし、タマネギだけ買うつもりが余計なお菓子まで買い込んでしまい、これだから、ボンッ・キュッ・ボンッにほど遠くなるんだとレジで会計を済ませてサッカー台の上でレジ袋にお菓子を入れながら自己嫌悪になっていた。

その後、スーパーを出て当初の目的であった目薬を薬局でゲット。

家に帰る途中、やっぱりコンビニでアイスも購入。我ながら弟思いの姉だなと自負しつつ、家に戻ると裕樹の姿はなく、冷凍庫にアイスをしまってリビングを通るついでにテレビのスイッチを消した。

「何で消すんだ。見てたんだよ」

はぁ……。

「だってお父さん、鼾かいてたじゃない」

「見てたんだ」 

「はい、はい」

お決まりの台詞をオヤジに言われ、仕方なくもう1度スイッチを入れてから自分の部屋へと急ぎ、パソコンの電源を立ち上げながら携帯を充電器に載せようとしてメール受信に 気付いた。

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