婚活
着替えてまずは、ご飯を食べに下に行こう。ふと、電源の入っていないパソコンに目をやる。第一回目の婚活は、失敗か……。錦織さんだっけ?あの手の人も、中には居るんだな。出会いのチャンスはあっても、時間がない。だけど結婚はしたいし、でも期限もある。果たして錦織さんは、今年中に結婚出来るのかな。他人事ながら、少し気になった。

「ごちそうさま」
「珠美。もう食べないの?何か食べてきた?」
母が珍しく残した私のお皿を見て、不思議そうに聞いている。
「ううん。食べて来ないけど、少し太り気味だからダイエット」
「今更、もう遅せぇよ。姉貴の大食漢はすでに胃が大きくなってるし、いくらダイエットしたからって一度増えた細胞は減らないぜ」
相変わらず、口の減らない裕樹め。
「わかってるわよ。だから、その細胞の1つ1つを小さくするしかないんジャン」
「へぇ……。珠美。一応、わかってるんだ」
和磨がけしかけてきたが今は構う気分にもなれず、食器を重ねて持ちながら立ち上がり裕樹と和磨の後を通ってキッチンへと向かう。
「珠美。具合でも悪いのか?」
「お父さん。違いますよ。ダイエットしてるんですって」
お父さんったら新聞読んでて、全然会話に入ってないから遅れてるし……。キッチンからリビングは通らずそのまま廊下に出て部屋に向かったが、部屋に入りドアに鍵を掛けた途端、大きく溜息をついてしまっていた。こんな事で、1回でめげてたら駄目ジャン。まだ始まったばかりなのにさ……。ん?するとちょうどその時、携帯が鳴っているのが着信ラを知らせる光でわかった。
誰だろう?画面を開いてみると、由佳からだった。
「もしもし」
「珠美。今何処?」
「もう、家だよ」
「そう。どうだった?朝からずっと、気になっててさぁ」
由佳……。気にしてくれてたんだ。
「うん。今日の人は、人柄は真面目そうで良かったんだけど……。来年から出向するらしくて、それで切羽詰まって相談所に入って結婚相手探してる人だったのよ」
「そうなの?」
「うん。それで今年中に結婚したいらしくて、そこでジ・エンドだった」
今年中とか、やはり期限区切られたりしてしまうと、ちょっと引いてしまうよな。
「珠美?」
「ん?」
「大丈夫?」
エッ……。由佳?
「大丈夫だよ」
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