婚活
慌てて目を逸らすのも不自然だし、必死に和磨の目を見ながら問い返す。
「高校とかでよく居なかったか?授業中、サンダル履いてた教師」
そういえば、居たかもしれない
「居た、居た。サンダルで教壇に立ってた先生、居たよ」
「あれに、もの凄く俺憧れててさ。めちゃくちゃ楽そうジャン?サラリーマンの革靴とかって疲れるし、夏は蒸れるし、絶対サンダルで仕事出来る教師がいいってずっと思ってたから」
和磨が教師になりたかったのは、そんな不純というか、単純な動機だったとは……。
「数学の先生とか、私、絶対嫌いだったけどね。インテリぽくてさ。でも和磨は全然、インテリどころか、ナンパな兄ちゃんって感じだよね。アッハ……」
教壇に立っている和磨を想像すると、生徒に毛が生えたような男子が教えてるように思えてしまう。
「ナンパな兄ちゃんで十分。女子高生には、そういう教師の方がモテるんだって」
「あんたの動機は、やっぱり不純だよ」
「自分だって、今の会社入る時、裕樹と俺に何て言った?いい男がいっぱいいそうだから ここに決めたって、言ってただろ?」
そうだった……。でもねぇ、現実はごく一部の部署にしかいい男は存在しなくて、あとは 加齢臭&メタボのオヤジばかり。会社選択からして、人生間違えたのかもしれない。
「俺、今年いっぱいで会社辞めたら、独り暮らししようと思ってたんだ」
エッ……。
和磨が独り暮らし?
「で、出来るの?大変だよ?ご飯とかどうするの?自分で作らなきゃいけないんだよ?家賃とかもあるし、生活苦しくなるし……」
私も一時期独り暮らししたいと思った事があったから、いろいろ考えた事もあったけど、やっぱりどう考えても無理だと思ったのと、そこまでして独り暮らししたいとも思えず、未だ楽な実家ライフをエンジョイしている。
「ハハッ・・・やっぱりそう思うよな?いろいろ計算してみると、無理そうだからやめた」
和磨。
「さて、そろそろ帰るか?もう1時近いし」
「うん」
和磨が先に、防波堤からいとも簡単に飛び降りたので、それに習って飛び降りようとしたが着地に失敗して転びそうになり、和磨が腕を引っ張ってくれたが、その拍子に和磨に抱きついてしまっていた。
「ご、ごめん」
慌てて和磨から離れ、そのまま助手席の前に立って和磨がワイアレスキーでドアロックを 解除した音を聞くと、急いで助手席に座りシートベルトを締めていた。
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