婚活
一気に目が覚めた。うわぁ、驚きだよ。相手からエントリーが入りなんて、嘘みたいだ。そのまま飛び起きて、朝食もそこそこに相談所からのメールを開き、相手の画面を見る。
うわっ。国立大卒って……ガリ勉君だったらどうしよう。でも顔はあっさり系で、結構いいかも?経歴は……っと……。ん?せっかく見入っていたところに、ブルブルと携帯の着信を知らせる振動音が机の上でしていた。もぉ、こんな時にだれよ。電話してくるのは?
エッ……。
携帯の画面に表示された名前を見ると、そこには熊谷恭一の文字が。今更、何の用なのだろう。出るべきか、出ないべきか。でも別に私は悪い事をしてる訳じゃないから、逃げずに 出よう。
「もしもし」
「熊谷です」
「おはようございます」
ごく自然に振る舞おう。それが賢明な気がする。
「一昨日の夜はとんだ邪魔が入っちゃって、あまり話せなかったね」
とんだ邪魔?和磨の事を指しているとわかって、思わずムッとしてしまう。
「それで今からなんだけど、これから会えないかな?もう、すぐ傍まで来てるんだ」
すぐ傍まで来てるって……。
「今から……ですか?」
電話に出た事を後悔した。
「昼間だし、ファミレスとかなら駄目かな?」
熊谷さん……。
和磨の言葉を思い出す。熊谷さんって、社内の女子の百人斬りを目指してるんだっけ?その場しのぎで今日は用事があると言って避けていても、またきっとしつこく来られそうだしな……。ここはきっぱりもう一度、断ろう。意思表示ははっきりさせた方がいい。
「あの……。申し訳ないのですが、熊谷さんの事は、私、信用出来ないので、仕事以外ではお会いできません」
絶対、嫌だよ。和磨だって言ってた。珠美が彼奴の餌食にならなくて良かったって。
「白石の言ってた事は事実だが、もう今は違う」
エッ……。
「確かに俺は、入社した頃から遊びまくって、目を付けた社内の女は手当たり次第、モノにしてきた」
「だが、君を見てから変わったんだ」
「……」
「この前話した、不倫を精算した事も事実だ。そして今はもう、ちゃんとしたと言ったら おかしいかもしれないが、君との事は本当に真剣に考えてお付き合いしたいと思ってる」
「熊谷さん……」
今更、何言ってるの?今ひとつ、信用出来ない気がする。
「信じてもらえないかもしれないけど、本当なんだ。だからもう一度、会って話を聞いてくれないか?」
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