婚活
欲を言えば、今の生活スタイルは崩したくない。そう、結婚がリスクになって生活レベルを下げたり、切りつめたりしなきゃならないのは、正直、まだそこまでの男に巡り会えていないからかもしれないが、いまいち踏み込めない。

結局、300人以上いた候補の中から絞り込んだ男子数名。この数名の中からまたふるいに掛け、結果的に3人の男子をピックアップ。

1人目は、医者。仕事柄、きっと忙しいから放っておいてもらえそう。故に、今の暮らしを 持続できるという目算。

2人目は、地方公務員。転勤ないし、安定した収入。

3人目は、これまた歯医者。いわゆる自営だけど、歯医者は儲かるらしいし地元の親が歯医者の友達のお母さんを見ても、いつも小綺麗にして優雅に外車を乗り回しながらジムにも通っていたりしているから、寿退社しても自分の時間を有意義に使えそう

ざっと、そんな不純な将来設計から選んだ男。この3人の中から誰にするかが、また思案のしどころだ。

そんなすぐには逃げないだろうし、ご縁があればまだ誰からもオファーは来ないだろうから今日はここまでにして、じっくりまた明日以降新規登録の男も見たりしてから実際に会ってみる事にしようかな。焦っても仕方のない事だし……。

週明け、由佳から仕事の電話にたまたま出て、仕事の話をしたあと最後に由佳が言い出した。

「それでは本日のミーティングは、A会議室でお願い致します」

由佳?

「よろしいでしょうか?」

そうか……。

「かしこまりました。その旨こちらから営業3課にも連絡入れておきますので、失礼致します」

由佳のいる場所は、秘書室。私語雑談は、御法度なのだ。お局の餌食になるだけなので、かなり配慮が必要だ。携帯のメールも仕事中は見られないので、休憩時間にしか連絡を取る事が出来ない。まぁ、当たり前と言えば当たり前なのだが。

営業3課の朋美は携帯片手に取引先との会話もしているので、そこら辺はかなり融通がきく。そんな私は……と言えば、庶務担当で、どっぷり事務屋。でもこの庶務担当に配属になった事が、そもそも婚活に本腰を入れるきっかけとなったと言っても過言ではない。

何せ何度見渡しても、周りはメタボのオヤジばかり。下手すれば、私と同じぐらいの歳の子供がいる人も多分いる感じだ。

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