婚活
相性
またも、和磨とキスしてしまった事が頭から離れない。情けないな……。それこそ朋美に言われそうだ。たかだかキスぐらいで、ガタガタ言うんじゃないのよと。でも他の相手だったら、まだ良かったのかもしれない。和磨だから気になっているのだと思う。裕樹の友達で、小さい頃から知ってるいから弟としか思えないのに、何であんな事……。気を紛らわすために、今朝、連絡のあった自分をエントリーしてくれた未来王子の画面をもう一度開き、略歴チェックを始めた。返事は二週間以内とメールに書いてあった。もう少しよく考えて、由佳にも相談してそれから返事しようかな?朋美は今、小林さんの事でいっぱいだから、それどころじゃないだろうし……。
週明け、いつものようにメタボ&加齢臭軍団の待つ事務所へと向かう。これがイケメン軍団だったら、どれだけ仕事に精が出ることか。そんな願望を抱きつつ、その週はみんな忙しくて、未来王子の事は由佳にも相談出来ずじまいに終わり、週末の金曜日の晩、またゆっくりと本腰を入れて未来王子の画面と睨めっこをしながら思案に暮れていた。もう何度も画面を見ていて、殆どエントリーしてくれた男性の事はまる暗記してしまってるほどだ。
「珠美。葡萄食べない?」
おっ。葡萄?いいねぇ。
「食べる。今行くから」
下から母の声がして、やはりここは色気より食い気。即答して画面を消して下に降りていくと、階段の途中から和磨の声が聞こえた。来てるんだ、和磨……。日曜日以来、そういえば会社でも会わなかったな。あんな啖呵切っちゃって、熊谷さんとはあれから大丈夫なのだろうか?何となく気まずいが、普通に振る舞わないと裕樹に怪しまれる。
「あっ、和磨。来てたんだ」
「おぉ、珠美。今週、パワフルに忙しそうだったな」
エッ……。
何で知ってるの?そうか、朋美か。同じ課だもんね。
「そうそう、最悪だったよ。取引先が棚卸しとかで、なかなか備品入って来ないし……」
普通に会話出来てるジャン。大人だ、私……自画自賛。
「ごちそうさま」
お皿を片付け、さっさと部屋に行こうと階段を上っていると、後から和磨が上ってきていた。
な、何?
「和磨。左の棚の上にあるから」
「了解」
あぁ、裕樹の部屋に行くのか。二階に上がり、部屋に入ってドアを閉めようとしたが、ドアが閉まらない。見ると、和磨の足がドアに挟まっていた。
「な、何?」
「珠美。話しがある」
< 97 / 255 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop