婚活

「私は、ないから」
何故か、和磨を突っぱねてしまっている。
「いいから聞けよ」
うわっ。
すると和磨がドアを思いっきり開け、部屋の中に入ってきた。
「勝手に入って来ないでよ」
「何もしねぇよ」
全然、信用できないし……。
「さぁ、どうだか？」
「どういう意味だよ？」
すると、和磨が鋭い目つきで私を睨んだ。
「和磨のやってる事だって、熊谷さんと大して変わらないじゃない」
「……」
「図星？」
怯んだら負けだと思い、和磨の顔を覗き込んだ。
「珠美。俺、お前の事、嫌いだわ」
和磨……。
視線を一瞬、私と合わせた和磨は、その後ゆっくりと天井を見上げた。
「そ、そう。別に嫌いも何もないでしょ？最初から和磨は裕樹と友達なんだし、私はその姉で……。まぁ、裕樹の友達に嫌いとか言われるのは、あまりいい気はしないけど、でも……」
「でも何だよ？」
天井を見上げていた和磨が、私に視線を移した。その和磨の私を見る目がとても怖い。
「勢いだか、何だか知らないけど、いきなり人にキスしておいて、そのあとすぐまた別の女と平気で会話出来る和磨の神経が、私には理解出来ないから」
「……」
何で黙ってるのよ。いつもなら、「うるさい」とか、「馬鹿じゃねぇ？」とか、言い返してくるはずなのに、今日の和磨は何かが違う？
「知りもしないで、よくそこまで言えるよな」
エッ……。
「どういう事よ。はっきり言いなさいよ」
和磨は私をひと睨みすると、ドアを開けかけドアノブを持ったまま立ち止まった。
何？
しかし、和磨はそのまま部屋から出て行き、裕樹の部屋のドアを開ける音がしていた。
和磨……。
いったい、何が言いたかったんだろう？一歳しか違わない私と和磨の精神年齢は、お互い　同じようなものだと思っている。大きく違うのは、男と女の違いだけ。それなのに和磨は、時に大人びて見える事がある。男らしいというか、逞しいというか、けれど何を考えてるのかわからない時も多々あって、いきなりキスしてきたりと思ったら、平気で舌ではなく、それこそ唇も乾かないうちから、違う女の子と平然と話しが出来たり……。
「珠美。俺、お前の事嫌いだわ」