婚活
嫌いでいいよ、和磨。結局は裕樹の友達で、弟の友達の枠内での付き合い。それがいちばん居心地がいい気がする。きっと、和磨もそう感じてるはずだろう。そうだ!和磨の事に、時間を割いてる場合じゃない。未来王子の分析の途中だったんだ。パソコン画面に向かいながらも、何故か、さっき和磨に言われた言葉が離れない。
「馬鹿じゃねぇ?」
自分で自分に喝を入れ、未来王子のプロフィールを半分上の空で読み流しながら、居てもたっても居られず、携帯を手に取り相談所に電話を掛けた。
「もしもし、沢村ですけれども……」
運良くというか、以心伝心というのか、担当の女性が一発で出た。
「先日のお話なんですが……」
「はい。お気持ちの整理は、出来ましたでしょうか?」
受話器越しに聞こえてくる担当者の何ともハイテンションな声に、こちらはテンション下がりまくりだが、ここはめげずに自分の意思を伝える。
「お話……進めて頂いても、よろしいでしょうか?」
「そうですか。かしこまりました。それでは先方にご連絡させて頂きまして、またお会いするお日にち等をこれから詰めて参りましょうね。ちょうど今日は祝日ですから、先方も いらっしゃると思いますので、またこちらからご連絡させて頂きます」
「よろしくお願いします」
何だか、どちらが当事者なのかわからないほど温度差のある声のトーンに引き美味になりながら、電話を切るとどっと疲れが出てしまい、ベッドに横になりながら天井を見つめた。
私……本当に結婚する気あるのかな?無理して婚活しているような、していないような?理想の男性と巡り会いたいのは、どの乙女も一緒。だけど、今の生活に不満があるわけじゃなし。かといって、老後を考えると隣りに伴侶がいた方がベストにも思える。とどのつまり、切羽詰まっていないからなんだ。30歳という年齢は、若いのかどうかは観点の差によって違ってくるけれど、適齢期とはいったい何歳なんだろう?結婚するって、こんなにも無理矢理自分でレールを作らなきゃいけないのかな?
「姉貴居る?入るよ」
裕樹?
「居るよぉ」
裕樹がドアからひょっこり首だけ覗かせ、私が居る事を確認すると部屋の中へと入ってきた。
「姉貴。今度の土曜なんだけど、ちょうど見頃みたいだから恒例の紅葉見に和磨と一緒に 行かねぇ?」 
「えっ?」
和磨と一緒に紅葉?
「どうせ、用事ないだろ?」
「……」
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