君がたとえあいつの秘書でも離さない
出会い
世の中にはジングルベルが鳴り響くこの季節、女ふたりで今年はホテル泊。
「遙、この料理ちょっと味濃くない?」
茶色のセミロングの髪を綺麗に裾カールして首をかしげる皐月。
可愛いいな……彼女は私と過ごすクリスマスでいいのかしら?
営業の田村さんも、名取さんもあんなにアプローチしてたのに、
結局彼女のクリスマスを勝ち取ったのは私。皆さんすみません。
皐月は私の同期であり、愛すべき親友。
「そうね。ちょっと濃いというか煮詰まり気味というか」
「噂のイタリアンもこの程度だったか……」
「止めなよー、今日はクリスマス、予約も多いし、色々大変なんではないでしょうか」
「遙、なんでここの味方なのさ。訳わかんない。女同士で来てるんだから、店の判定はマストです。今後のためにも」
そうねえ。今後のため。それはつまり……。
「しかし、遙も異動と同時に忙しくなって、春樹と別れて良かったかもよ。あの新人の女の子が付き合いだしたの得意げにしてるのを止めもしないでさ」
「……いいよ、もう。どうせ会うこともなくなったし。営業事務でなくなった段階で、縁が切れたのも運命だったような気がする。社内だし、ある意味助かったわ」