君がたとえあいつの秘書でも離さない
 
 腕を取られて、引きずっていく。

 夕飯は和やかに、ひさしぶりで母も嬉しそうだった。

 たまには母のために帰るべきだと思い直した。

 父の書斎に上がり、向き合って座った。


 「しばらくは誰も入れないように」

 父の指示で、誰も入ってこない。


 「まず、どうしてお前を呼んだのか、想像はついているか?」

 父は、じろりとこちらを見ると話し出した。


 「いいえ。でも仕事のはなしではありませんね、きっと」


 「お前の秘書、穂積君が私の所に先日来た。お前のマンションに書類を取りにいったとき、女性とすれ違ったそうだ。見たことのある他社の秘書。驚いたことに、彼女が車を待っている間にお前が下りてきて、その女性を迎えに行き、手を繋いでマンションに戻ってきたとか。親密だったと付け加えることも忘れていなかった」
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