君がたとえあいつの秘書でも離さない
 
 「ふーん。穂積君はあっちの手のものかもしれないな。ストーカーの話や、頭が回るということは、その可能性もある。正しく回る頭ならいいんだが、余計なほうに回る頭もあるからな」

 父さんは、本当にすごい。
 自分の父親で良かったと働き出して間近でみるようになったとき痛感したが、今もそう思う。

 「入札関係の書類を穂積君へ回らないようにしろ。今からじゃ遅いかもしれないが、少し変更を入れて攪乱できるか?」

 「はい。というか、柿崎以外には本丸は見せてません。システムも別です」

 「それなら大丈夫か。安心するなよ。こういうことは思いも寄らない人間が関わってたりする。俺も今まで痴話げんかは色々見てきたが、会社を巻き込む馬鹿はよほどの自信があるか、切れ者か。次男はどこまでかわからんが、その秘書に固執しているとすると、お前と張り合うことでしか彼女の心をつかめないだろう。気をつけろ」

 「わかりました。気をつけます」
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