君がたとえあいつの秘書でも離さない
「彼女が匠さんと付き合っていると父親の社長が知れば、大変よ。おそらく、大反対されるわ。社長にこの間告げ口したの。期待してね」
「そうか。で、君は親の力で彼の婚約者に昇格できそうなのか?」
彼女は俺のそばに来ると、身体を擦り付けてきた。
「そうね。最初はその予定だったけど、貴方の方がいいかもしれない。私、貴方のこと好きになってしまいそうよ」
気持ち悪い。何を言っているんだ?
腕を放すと、彼女に水を渡した。
「お前と俺が実は知り合いだったとは匠さんも知らないだろう。しかもお前が高校時代襲われかけたのを俺が助けたなんて。お前の親父は自分の秘書がお前を襲ったなんて知られたら大変だからな。極秘にしてるだろ」
「……そうね。これは貴方と私の秘密よ。でも、助けてくれたから貴方と関係を持ったわけじゃない。私、あの頃から貴方が好きだったもの」