君がたとえあいつの秘書でも離さない
「そうか?でも堂本コーポレーションの次期社長夫人の席と石井コーポレーションの専務辺りの俺とでは比べられないだろ?」
「嫌ね。私がそんなこと気にするように見えたの?」
「少なくとも、お前の親父は気にするさ。匠さんもいい男だからな。お前も悪い気はしないくせに」
「……そうね。確かに。仕事だけでなく普段も貴公子然として魅力的な人よ」
そうだろうな。
兄貴の溺愛していた幼馴染みが高校時代、匠さんに告白してからフラれて自殺未遂をした。
それ以降、兄貴は匠さんを敵視するようになった。
ただ、匠さんは部活が一緒だったが、その頃から経営手腕は飛び抜けていた。
兄はどちらかというとその場限りの外交が得意。
長期の緻密な戦略は立てられず、経営者には俺の方が向いているのはわかっていた。
そのことに、うちの父よりも先に匠さんが気づいた。
恐らく、堂本コーポレーションの社長の耳にも入っているはずだ。