君がたとえあいつの秘書でも離さない
「石井コーポレーションの石井弘取締役でいらっしゃいますか?」
高いソプラノが響く。
「お迎えにあがりました。ご案内致しますどうぞ」
そう言うと、エレベーターへ連れて行かれる。
エレベーターに入ると、最上階を押す。
そして、こちらに背を向けながら、ちらちらとこちらを見ている。
「さすが、堂本コーポレーションの副社長秘書ですね。お美しい」
ビクッとした彼女がボスを見た。
余裕の笑みを浮かべる彼を彼女は返事もせずじいっと見ている。
何?なんか……。
すると、最上階へ到着直前に彼女が言った。
「石井コーポレーションの秘書の方もお綺麗ですね。副社長もそう言っておられたのですが、今日よく分かりました」
ボスは、開いたエレベータのドアを通り抜ける際、何かつぶやいた。
彼女は、開くボタンを押したまま、彼が通るのを見ている。
私は、異様な雰囲気を感じながら、その後ろを付いていった。