君がたとえあいつの秘書でも離さない
 
 そう言うと、匠さんはソファを手で示した。

 「匠さん。言いたいことはわかりますけど、穂積さんとは一時期知り合いだったというだけで特に何も関係はありませんよ」
 
 弘は、ニヤッと笑った。
 
 清花との関係は、あの日で終わらせた。

 もう一ヶ月以上前だ。
 
 欲しい資料も手に入らないとわかった段階で、匠に気づかれたと感づいた。
 
 彼女は何度も連絡してきていたが、終わりにしたほうが君のためだと諭した。
 
 匠さんが気づいている可能性も含めて、説得した。
 
 一ヶ月前の段階なら、何も手に入れていないし、なんの証拠も残っていない。彼女も罪に問われない。

 今日は、そんなことのために来たのではない。 
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