君がたとえあいつの秘書でも離さない
 
 いつもそうやって高いところから俺を見下すように眺めている。
 
 高校の時からそういう人だった。
 本人は無意識というのも、腹が立つ。
 兄さんがやり込められているのを見ていて、死ぬほど頭にきた。
 
 そして、幼馴染みのさくらのこと。
 今は兄さんの妻だが、それもいろいろある。

 「彼女は僕の秘書だ。敵対会社の秘書と付き合うなんて、おかしいでしょう。インサイダーを疑われてもしょうがないでしょ。何かこちらに仕掛けてきたら、そう取られますよ」

 「そう取られたら、古川さんも巻き込まれる。君にとってそれは不本意だろ?」

 「……そうですね。そのためにも、古川さんにも選択してもらわないとね。石井の社員として。守秘義務のある職種だ」

 「前にも申し上げましたが、私はどちらにも与しません。信用頂けないのが残念です。信用頂けないなら、今の仕事を辞めるまでです」

 彼女は言い切った。
 
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