君がたとえあいつの秘書でも離さない

 「そうですね、蓮見専務は御曹司なので割とおおらかで真っ直ぐなんです。憎めないというか。頼まれるとやってしまう私もしょうがないんでしょうけど。石井取締役もそうですよね?」
 
 「はい。そうですね。次男でおられますけど。長男は現専務です。今のところプライベートのことを頼まれたことはありません」
 
 「それが普通といえないところが秘書という職務の悲しいところですね。まあ、今回はお話したほうが専務のためになるかもと思ってお話ししましたので、内密にお願いします」
 
 「もちろんです」
 
 美味しいコーヒーを頂きながら、一応携帯アプリや番号も交換した。
 そういうことになる可能性があるからと頼まれたのだ。

 ボスふたりの仕事を含めた話し合いはその後三十分で終わりとなった。

 取締役と地下駐車場まで一緒に下りた。
 私は最寄り駅で降りて、先に電車で帰社予定。
 取締役はまだあと二件の挨拶回りをハイヤーで回る。

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