君がたとえあいつの秘書でも離さない

 「いいえ。公私混同はしませんが、匠さんと一緒にいるために方法を考えようと思っていました。でも、予想をはるかに上回る出来事が先に起きて、私も困惑してます」
 
 「匠さんの彼女に謝りたかった。あなたを味方にして戦いたかったの。ねえ、弘君の側を離れる気持ちはある?」
 
 「え?……できることならそうしたいです」
 
 「この会社を辞める覚悟はある?もし、同じくらいの待遇を他の会社で得られるなら……」
 
 「どういう意味ですか?」
 
 「私の両親の会社をご存じか知らないけど、全国展開している清水物流って会社」
 
 「知っています」
 
 「今回のことはうちの両親も怒っていて、もし両親のほうにまで取材の手が伸びたら大変なことになる。そうなる前に弘君をなんとかしようということになって。貴女さえ良ければ清水物流に転職を出来るようにします。もちろん東京でも地方でも」

 「あ、会議が終わったみたいです。声がします」

 「そう、ねえ、携帯の電話番号教えておくから後で連絡してちょうだい」

 そう言うと、番号を交換して電話を切った。
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