君がたとえあいつの秘書でも離さない

 俺のことはいずれ直也もわかるだろうが、一旦副社長を解任してもらい、会社を辞めて英国に渡る覚悟でいる。
 祖父母があちらの田舎で暮らしているのだ。

 そこまでするのには理由がある。

 翌日、一部の取引先が離脱して、取引のある銀行から関係を清算したいと連絡があった。
 石井コーポレーションのメインバンク原田取締役の父親が頭取の銀行が裏に付いていると父の調査でわかった。

 直也は原田取締役と学生時代からの知り合いで、皐月さんは原田取締役の秘書だ。
 複雑な関係になってしまった。
 直也が間に入り探ってくれたけれども、すでに動き出していてどうにもならなかった。
 
 ただ、弘君が後ろにいるということだけはわかった。
 遙の立場を思うと胸が張り裂けそうだった。
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