君がたとえあいつの秘書でも離さない
 
 「先ほど、蓮見専務から聞いたが、川口さんと一緒に会ったんだって?」

 「はい、たまたま川口さんが原田取締役と挨拶回り中に一度蓮見専務と会っていて、外で声をかけられまして……」
 
 「なるほど。蓮見専務はあの通りのイケメンで口もうまい。君も気をつけて。こんなこと言う立場ではないかも知れないが」

 「それでしたら大丈夫です。ターゲットは私ではないようですし」
 
 「いや、そうかもしれないが、気をつけるに越したことはないからね。一応僕の秘書なんだからさ」

 「ありがとうございます」

 いい人だな、石井取締役。
 こういうところはこの人の担当秘書で良かったと思うところ。
 
 先ほど言ったとおり、公私の区別はきっちりつける方だし。
 ちょっと細かいけど、いい加減な人よりはずっといい。

 電車で戻りながら、携帯アプリで皐月に事の真相を聞こうとメールをしておく。
 返事は夜でいいよと付け加えることも忘れずに。
 忙しいと、夜は疲れて連絡しそびれることが多いから、思いついたときに必ずメールを入れておくようにしているのだ。

 
< 18 / 274 >

この作品をシェア

pagetop