君がたとえあいつの秘書でも離さない
「今日はお出かけするから、おしゃれしてくれ」
* * *
二ヶ月ぶりに彼から突然連絡があった。
終業後、会社の近くで待っていた柿崎さんの車でセレクトショップへ連れて行かれ、上から下まで彼の好みにお着替えしろと言う。
「遙。このオレンジ色のドレスがいいな。髪はアップにしてくれ。うなじが見えるほうがいい。アップにするのは今日だけだぞ。他のヤツには見せないからな。俺のためだけにしてくれ」
そう言うと、私の背中を押して試着室へ押し込む。ドレスを店員に渡すと、店員が試着室にかけてくれる。
「ねえ、匠さん。どこに行くの?わざわざ着替える必要あるの?」
「そう。着替えてオペラ鑑賞だ。俺も着替えるからな」
そう言うと、タキシードを柿崎さんから渡されて、メンズの試着室へ店員に案内されて行ってしまった。
「ステキ」