君がたとえあいつの秘書でも離さない
 
 そういえば、匠さんはどこの会社の人なんだろう?
 同じ会社なのかな、やっぱり。
 だとすると、今回のように会えることもあるのかしら。
 
 できるなら、直也さんではなく匠さんに会いたかったな。
 絡まれた時もスマートに助けてくれたし、割と寡黙。
 
 目立たずそれでいてキチンとしている。
 私のタイプ。ルックスはもちろんだけど。
 
 少しクールな印象だけど、かっこいい。
 そんなことをぼんやり考えていたら、乗り越しそうになり、急いで電車を降りた。

 夕方、戻ってきた石井取締役が、石井専務と打ち合わせすると言って専務の部屋へ。
 隆専務は実兄だから、直接お兄さんに連絡して秘書を通さないで行ってしまうこともある。

 戻ってきた石井取締役が残っていた私に話しかけた。
 
 「今日行った蓮見商事は堂本コーポレーションが大口の取引先だ。まあ、簡単に言うとそちらの傘下に近い。ウチは、堂本とはライバルだから、蓮見商事がうちと取引のはなしをしてくれたのは驚きなんだ。兄さんにも先ほど報告してきたが、上のほうでさらに話し合いがあるだろう。どうやら、原田取締役は大学が蓮見専務と一緒でサークルか何かで前から知り合いだったようなんだ」
 
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