君がたとえあいつの秘書でも離さない

 「つまり、彼と距離を置いて、できれば別れて欲しいと言うことですね?」
 
 「……こんなことを私が君に言ったと匠が知ったら、籍を抜いて出て行くかも知れない。だが、会社のことは私の力でなんとかするが、匠を退社させることだけは阻止したい。平社員で海外支社に飛ばし、時期が来れば呼び戻すつもりなんだ」
 
 目の前で座っていたが、驚きで手が白くなっていく。
 そこまでとは……。
 
 何が理由で弘取締役がそこまで匠さんを攻撃しようとするのか、わからない。
 私のせい?だとすると、身を退くしかない。
 
 「……わかりました。会社を巻き込むのは私も本意ではありません。ご迷惑おかけして申し訳ございませんでした」
 
 「君がとても素晴らしい女性なのは妻からも聞いていたし、今も直接お話ししてそう思っている。君を守るためでもあるんだ。時間が必要だ。いずれ匠と何も気にせず会えるときが来るだろう。その時までふたりの気持ちが変わらなければ大丈夫だ」
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