君がたとえあいつの秘書でも離さない
 
 なんですって?
 
 「そうでしたか。だから、原田取締役のお話をされていたんですね」
 
 「原田取締役にも言って、こちらの傘下に入ってもらえないか働きかけていくチャンスだ。どうやら原田君のところの川口君に興味がありそうだしね」
 
 ……そこまで。
 
 「どうして、うちと急に取引する気になったのか、原田取締役に電話で先ほどそれとなく聞いたんだよ。そしたら川口君のはなしを聞いてね。まあ、公私混同は嫌いだからそれは最終的な切り札にしかしないつもりだけど。チャンスは大事にしないとな」
 
 「……」
 
 「君も、川口君と同期らしいし、複雑だろうが、このことは君を信じて耳に入れたんだ。他言無用で頼むよ」
 
 「……わかりました。川口を悲しませるようなことだけは避けてあげて下さい。お願いします」
 
 「もちろんだよ。だから言っただろ」

 思いも寄らない展開だった。
 皐月から連絡をもらう前にこんな話を聞こうとは。
 
 それに、匠さん。
 彼も蓮見商事だったらどうしよう。怖くなってしまった。

 
< 20 / 274 >

この作品をシェア

pagetop