君がたとえあいつの秘書でも離さない

 その日の夜、退職願をしたためた。
 
 翌日、弘取締役に渡した。
 体調不良を理由として。

 デスクを叩く大きな音。立ち上がって大声を出した。
 
 「何を言ってるんだ。辞めるなんて許さないよ。具合が悪いなら、療養休暇を認めるから休みたまえ」

 「取締役。社長からお話しいってますよね?」

 「……」

 「社長には異動願を先に出してあります。もし、受け入れて頂けないなら退職するとお伝えしています」

 「勝手なことをするな。君は俺の秘書だ。父には君をどうこうする権利はない」
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