君がたとえあいつの秘書でも離さない
「うん、休めば大丈夫。心因性もあるから。あの人から離れれば良くなるわ」
匠さんは、私をぎゅっと抱きしめた。
「遙。俺はアメリカ支社へ異動になる。結婚しよう」
そう言うと、ポケットから指輪ケースを出して、開けて見せた。
すごい、ダイヤモンドが見える。
キラキラしてる。
私の返事もきかないで、左手をつかむと薬指に指輪を入れてしまう。
「良く似合う。ピッタリだ」
「匠さん。ありがとう。気持ちは嬉しい。でも、ついて行けない。それに、すぐには結婚できないわ」
「遙。何も気にするな。大丈夫だ」
「ねえ、どうしてこういうことになったと思う?私のことが遠因にあるのも貴方の会社では知られているはず。降格されて海外に左遷されるあなたが、そんな私を連れて行ったり、結婚するなんて……反省していないのかと皆思うわよ」