君がたとえあいつの秘書でも離さない
 
 匠さんは、何も言わずまた私を抱き寄せた。

 「気にするなと言っただろ、遙。仕事は別になんとでもなる。会社は俺がいなくてもなんとでもなる。でも、お前はひとりしかいなくて、心配で置いていくなんて絶対にできない」

 彼の腕の中から出て、じっと目を見て真剣に話した。

 「しばらく時間をおきましょう。私も貴方以外の人は考えていない。先にアメリカへ行ってちょうだい。私も会社を辞めて、体調が良くなり次第追いかけるから。待っていて欲しいの」

 「遙。婚約してくれるな?この指輪をずっとしていると約束しろ」

 彼に抱きついて返事した。

 「ええ。婚約します。いずれ、貴方の元に行きます。でも、うちの両親には何も言わないで。私はあなたと付き合っていることも言っていないの。信用してないからじゃない。何があるか分からないと付き合い始めたときから思っていて、両親には心配かけたくなかったから。今の状態で婚約なんて、絶対反対される。わかるでしょ?」
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