君がたとえあいつの秘書でも離さない
二十時過ぎ。皐月からメールが入る。
直接電話で話したいが、今いいかと聞いてきた。
何か嫌な予感。
OKのスタンプをすると、すぐに電話がかかってきた。
「遙。報告が遅くなってごめんね」
つまりそういうことか。
「蓮見さんとお付き合いはじめたの?」
返事がない。
「遙。直也さんのこと、知ったんだね?」
「今日、蓮見商事へ挨拶に行ったの。直也さんが私を部屋へ入るように言って、石井取締役と一緒に入った」
「そうか。ごめんね、ホントに。でもお付き合いはじめたのはまだ先週なんだよ。連絡先交換してなかったけど、彼は原田取締役ともともと知り合いで、そっち経由で私に接触してきたの」
「ねえ、原田専務の手前断れなかったとかじゃないでしょうね?」
「それはない、さすがに。あの後、翌日には電話が原田取締役秘書宛でかかってきて、夕飯に誘われたの。その後二回ほど一緒に食事へ行った。告白されたのは先週なの。休日にはじめて会った」