君がたとえあいつの秘書でも離さない

 「紹介してくれよ……早く俺の子供に。待ちくたびれて会いに来た」

 そう言うと、私の左手を持ち上げて、指輪をなぞる。
 そして、お腹に向かって話しかける。

 「……お前のママは驚きすぎて声がでなくなっちゃったのかな?」

 優しい眼差しに、目の前が曇りだした。
 気づくと涙で彼の顔がよく見えない。
 彼に抱きついた。

 「……う、う、うー」

 彼は、私を優しく抱きしめると、背中を撫でてくれた。

 「愛してる遙。大変だったな。もうそろそろいいだろ、雲隠れ生活」
< 219 / 274 >

この作品をシェア

pagetop