君がたとえあいつの秘書でも離さない

 「……いざ、連絡しようと思うと怖くて。ちょっとどうやって連絡しようとか考えていて。匠さん怒りそうだし。今も怒ってるでしょ?嘘じゃないのよ、この間も皐月に相談して……」

 
 「遙……皐月さんには妊娠のこと話したんだな」

 
 「……だ、だって。ごめんなさい。アメリカへ行く匠さんにそんなこと言ったら必ず連れて行くとか、はじまると思ったの。妊娠がわかったのもあなたがアメリカに発つ直前だったし。会社も辞められてなかったでしょ。だから……」

 
 「分かった、分かった。落ち着け。そんなふうに言わなくていい。怒っているわけじゃないんだ。しょうがなかったのも理解できる。さぞ驚いただろう……俺も聞いたときは耳を疑った。君を妊娠させるつもりはなかったからね。でも君には俺だけのはずだから、俺の子で間違いない。お腹の子を守ってくれてありがとう。君に全部押しつけてしまって、自分が許せない。父も君に謝っておいてくれと言っていた。別れるよう言われたらしいな」

 
 「……それは。しょうがないことよ。お父様を責めてはだめよ。会社経営者なんだから。従業員が一番大事だし、そう、奥様のためにも匠さんは失えない、退社させることだけは絶対させられないっておっしゃっていた」 

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