君がたとえあいつの秘書でも離さない
「……まさか、君が妊娠してるとは知らなかったからと青くなっていた。父のあんな顔初めて見たよ。母は怒り狂ってる。俺もひっぱたかれた」
え?本当に?
「いや、母の怒り方はすごかった。柿崎や柿崎の妻もおびえるほどだった。許せない、離婚するとか騒ぎ出して、わけわからない。父は真っ青だし。母には本当に弱いんだ。柿崎が、離婚したら古川さんの義母さんになれませんよとかいったら静かになった。びっくりしたよ。あんなに怒る母は初めて見た。俺は両親の初めての顔を遙のお陰でたくさん見せてもらった」
「匠様。そろそろ、古川さんをご自宅へお送りしましょう。冷えるといけませんから」
そう言うと、木陰から柿崎さんが現れた。運転手をされているお父様の柿崎さんだ。
「……邪魔だ、柿崎。呼ぶまで来るなと言ったろ」
「古川さん。色々申し訳ございませんでした。私達親子がもっとしっかりしていればこんなことにはならなかったでしょう。お一人でおつらかったでしょう。今までの分、これからしっかり償いますから。早くお屋敷へ移って下さい」