君がたとえあいつの秘書でも離さない

 深々と頭を下げられた。

 「やめてください、柿崎さん。誰も悪くないですから。私が黙っていたのがいけないんです」

 「息子が言っていました。遙さんが妊娠してるとアメリカにご連絡したとき、匠様が怒ってパソコンの電源が一旦切れたとか。怒り狂って暴れたらしいですよ」

 「余計なことを言うな、黙れ」

 「ですから、堂本家は古川さんの妊娠発覚で大変な騒ぎでした。上から下まで。早くお顔を見せて差し上げて下さい。奥様もそのうち来てしまいますよ」

 「いや、冗談じゃなく、今日も一緒に来るって大騒ぎだったんだ。さすがに今日はやめろと父に言われて諦めたが……」

 私は椅子から立ち上がった。
 
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