君がたとえあいつの秘書でも離さない
素性
匠さんのことを聞いたときの皐月の様子がどうしても気になった。
でも、これ以上聞くなというような話のそらし方。
しょうがないけど、あのとき連絡先を聞かなかったことを後悔し始めた。
蓮見さん経由で連絡を取ってもらうことを悩みはじめた頃、思いも寄らぬことが起きた。
同じ業界の会社を集めた省庁主催でパーティ形式の説明会があった。
社長と専務が海外出張で出られなくなってしまい、次男の取締役にその仕事が回ってきた。
秘書同伴も許されていたので、顔の分からない人を私が誰かを探してフォローする意味合いも含めて同行が決まってしまった。
本来、社長クラスの人が出席するものだ。
恥ずかしくないように、出席前に髪をセットに行き、セミフォーマルのスーツに着替えて同行した。
名札をつけて回るので、相手の名札が見えれば問題ない。
私は顔よりも、名札を見ることに集中していた。
そして、特徴をメモしていく。