君がたとえあいつの秘書でも離さない

 その夜。
 柿崎さんの車でご実家へ。
 実は初めて伺った。
 いつもマンションでお母様にお目にかかっていたし、お父様とは外でお会いしたから。

 「遙さん。本当にごめんなさいね。馬鹿息子で。まあ、お腹が少しふっくらしてる。体調どう?」

 玄関からエントランスを走ってきたお母様は私を見るとすぐに話し出した。

 「大丈夫です。こちらこそ、黙って消えて申し訳ありませんでした。お伝えするのが遅くなりすみません」

 「母さん、暗いんだからとりあえず、部屋へ案内しよう。遙、転ぶといけないから手を繋いで」

 そう言うと、私の手を繋いで歩く。
 前をお母様、その後ろを荷物を持ってくれている柿崎さんが続く。

 広く、明るい玄関。
 大きなお屋敷。
 初めて来たけど、庭も広い。
 暗くなってきていてよく見えないけど、きっと素晴らしいんだろうな。
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