君がたとえあいつの秘書でも離さない
玄関を入ると、エプロンをした老婦人が迎えてくれた。
「匠様。お帰りなさいませ。古川様、いらっしゃいませ」
柿崎さんが私に小声で言った。
「私の家内です。この家の家政婦をしております。柿崎奈津です」
「実質俺の育ての親だよ、遙」
「初めまして。古川遙です。よろしくお願いします」
涙目でこちらを見ている。
「こちらこそ。これから何なりとおっしゃって下さいね」
優しい笑顔。柿崎さんと同じ。安心する。