君がたとえあいつの秘書でも離さない

 玄関を入ると、エプロンをした老婦人が迎えてくれた。

 「匠様。お帰りなさいませ。古川様、いらっしゃいませ」

 柿崎さんが私に小声で言った。
 
 「私の家内です。この家の家政婦をしております。柿崎奈津です」
 
 「実質俺の育ての親だよ、遙」

 「初めまして。古川遙です。よろしくお願いします」
 
 涙目でこちらを見ている。

 「こちらこそ。これから何なりとおっしゃって下さいね」
 優しい笑顔。柿崎さんと同じ。安心する。
< 234 / 274 >

この作品をシェア

pagetop