君がたとえあいつの秘書でも離さない
 
 「確かに。直也さんの場合、皐月を取られたら泣きそうだよね。子供とふたりで泣いてたりして……」

 「やめてよ、冗談に聞こえない……困った人なのよ。匠さんは大人だからそんなことないわよね。うらやましい……」

 その時はそうかもしれないなんて思っていた自分を張り飛ばしたい。
 すぐにそうではなかったと気付くことになるとは思いもしなかった。

 退院後、二週間ほど実家へ赤ちゃんの忍と一緒に里帰りした。
 
 両親はとても喜んでくれたし、弟も甥を可愛がった。
 まさか望が全部母に話しているとは思わず、両親にはとても心配をかけてしまった。
 
 最初に両親の側に行きたいと頼んだのはそういうこともあるのだ。
 
 正月がこんなに賑やかだったことはないだろう。親族が正月の挨拶に来ると生まれたての赤子がいるんだから、大騒ぎ。

 親は本当に嬉しそうだったし、なぜか人見知りをあまりしない忍を皆が抱きまくってたくさん愛された。

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