君がたとえあいつの秘書でも離さない

 「……遙」

 「なに?」

 「綺麗になったよ。忍を産んでからさらにね……妊娠や出産すると女性は綺麗になるというのは本当なんだな」

 「え?」

 「俺はね……遙が入院したときから我慢していた。会うたび綺麗になっているのを最近実感していたからな。ここへ帰ってきたら念入りに可愛がってやろうと思っていたんだ」

 そう言って、キスをし始めたその時……。

 「ビャアーアー!」

 隣のベッドから忍の泣き声がする。
 ビクッと身体を震わせた匠さんが私から離れると、すぐに私は身体を起こしてガウンを羽織り、ベッドを降りた。

< 272 / 274 >

この作品をシェア

pagetop