君がたとえあいつの秘書でも離さない
「……すまない。時間がない。必ず連絡する。それと、君のボスには内緒にしてくれ。君の友人にも。僕も直也には内緒にする」
「わかりました。連絡待ってますね」
「遙。そう呼んでいい?」
「はい。匠さん」
もう一度抱き寄せると、急いで顔を見ながら手を握り、非常階段を出て行った。
しばらくそこに立ちつくした。
やっと動こうとした時、転びそうになって後ろの壁に背中を付けるとヘナヘナと座り込んでしまった。
遥、そう呼んでくれた。
我慢できない、会いたいと言ってくれた。
また、涙が頬を伝って落ちた。
嬉しかった。
彼も私と一緒の気持ちだった。