君がたとえあいつの秘書でも離さない
電話が鳴った。
「遥?いま大丈夫か?」
優しい匠さんの声。
「はい。ちょうどお風呂上がりです。タイミング良かった。早かったですね」
「……風呂上がりとか、煽っているのか?遥」
彼の言葉にこちらが赤くなり、返事できない。
「また、髪を上げてうなじが見えてるんじゃないか」
「そんなことありません。髪下ろしてますから」
「今日は髪を下ろしていたな。やっともう一度会えた。長かった」
「それより、今度いつ会いますか?お忙しいでしょう」
「遥に会うためならなんとかする。今日ほど大変なことはないだろう。早くても、さ来週の木曜日くらいになる。夜だ。いいかい?」
「もちろんです。今度は私が何としても会いに行きます」
「……遥。同じ気持ちだったことが分かって飛び上がりたいくらい嬉しかった。会場で冷ややかな目で君に睨まれたあの瞬間、死ぬかと思ったぞ」