君がたとえあいつの秘書でも離さない
裏の顔
お茶のセットを準備して、取締役室へ戻る。
二人はテーブルを挟んで、ソファに座っている。
お茶と葛きりを並べて、立った。
「ちょっと、君も座って」
専務からそう言われて、取締役を見ると、頷いている。
「失礼します」
横の独り席に座る。
「今日ね、原田君のところに蓮見商事さんの専務が見えてるんだ」
「……」
「古川君、どうした?」
顔色の変わった私を見て、専務が言う。
「先ほど、チラッとお見かけ致しました」
「そう。実は、原田君のほうで取引の詰めをしている。その後状況次第で、僕らもそこへ乗り込む算段だよ」
状況次第?
「どうやら原田取締役秘書の川口さんと蓮見専務がお付き合いをされているみたいだ。彼女のことは原田君もかわいがっているから、本気かどうかかなり確認したようだよ。蓮見専務とは大学時代から交流があったそうで、まあ、原田君も複雑だろう。そこへ来て、どうもかなり本気で川口さんが好きらしい。原田君が言うには、蓮見専務は彼女と結婚も考えるくらい好きなんだそうだ」