君がたとえあいつの秘書でも離さない
「ここだけの話にしてください」
二人は頷く。
「彼女は本当に蓮見専務が好きでお付き合いしているんだと思います。もともと、男性に告白されることの多い子ですが、なかなか付き合うことはしないのです。本人がかなり納得しないと付き合わないからです」
「そうか。それなら取引を進めるのは大丈夫そうだな。何かあって、共倒れとかしゃれにならん」
専務が言う。
「だから、公私混同は良くないといつも僕が言っているでしょ」
弘取締役が言う。
「……」
デスクの電話が鳴った。
「はい、石井です」
取締役がソファを立ち上がり、デスクの電話を取る。
「わかった。今から兄貴とそちらに行くから」
振り向いた取締役は、専務に目で合図した。
「さあ、最後の詰めだ」