君がたとえあいつの秘書でも離さない
 
 「古川さん、僕ら原田取締役の部屋へ行くから」
 
 「古川さん、その葛きりまだ食べたいから残しておいてね」
 
 「は?兄さんいい加減にしろよ」
 
 「わかりました。入れ物に入れて、専務秘書にお渡ししておきます。少しお土産に二個くらいつけますから」
 
 「あーいいなあ。古川さんホント僕のとこに……」
 
 「ほらいくぞ、兄さん」
 
 専務の腕を引っ張ってつれていく取締役。
 面白い兄弟。
 
 私は頭を下げて見送った。
 
 そして、皐月のことを思うと複雑だった。
 近いうちにゆっくり話す必要があると痛感した。

 秘書室へ戻ると、皐月にメールする。
 
 昼休憩を一緒にとりたいと連絡した。
 できないなら夜電話するからいい時間に連絡してと伝えた。

 もし、この取引が始まれば、彼女も別れることが難しいかもしれない。
 それを考えて取引を直也さんが進めているとしたら?
 
 そんな付き合い、私だったら息が詰まりそう。
 でも、愛し合っているなら口を出すことではない。
 
 
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