君がたとえあいつの秘書でも離さない
「遙。お前、最近綺麗になったな。なんか、あったのか?」
「え?お世辞言える人だったっけ?」
「お前。せっかく褒めてんのに何だよ。誰か出来たのか?」
「あんたに関係ないと言いたいとこだけど、まだシングルです」
「そうか、ならよかった」
「何がいいのよ」
「……悪かったよ、ホントに。魔が差した。今だから言うが、石井取締役にお前のこと牽制されてた」
え?なんて?
驚いて、箸を落としてしまった私を見て、春樹は苦笑いを浮かべている。
「勘違いしたんだ。石井取締役にお前をつまみ食いされたかと。お前のことは信用していたし、よく知っていたから違うはずだとわかってはいた。だけど、相手が悪い。いつもお前を独占してる。俺からしたら雲の上の殿上人だぜ。ホントに悩んで魔が差した」