君がたとえあいつの秘書でも離さない
嘘でしょ。そんな背景があったなんて。
春樹が謝ってきたとき、聞いてくれと言われても突っぱねていた。
まさかそんな理由があったとは。
「春樹が心配しているようなことは取締役から何もされてないし、私に気があるような素振りをされたこともない。でもごめんなさい。あのとき、貴方の話を聞く余裕が私にはなかった。そんなことがあったなんて知らなかった。牽制って気のせいじゃないの?」
こちらをじっと見る。
「……お前と付き合っていると言うことが耳に入ってから、何かというと俺の所に寄って話しかけてくるようになったんだ。しかもお前のことを聞いてくる。そして、お前がどんなにいい秘書か俺に言うんだ。そして結婚退職させるなよとか」
まさか……本当に?
「俺も、いい加減煩わしくてさ。お前に言おうかどうしようか悩んだ。でもお前の直属上司だし。言うと悩むだろ。お前結構繊細なところがあるし」
春樹……私のことを思って、言わないでくれてたの?