君がたとえあいつの秘書でも離さない
何言ってんの、春樹。
「その様子だと、取締役のひとり相撲のようだな。まだ、俺の方に分がありそうだ」
「だから言ったでしょ、私にそういう素振りは見せないし、公私混同は大嫌いな人なの」
「混同しなきゃいいんだろ。遙、気をつけろよ。何かあったら呼べよ。助けるくらいは出来る。いざとなれば、転職覚悟で助けてやるよ」
春樹ったら……。
「春樹ありがとう。何かあったら相談するわ。あなたも自分を大切にね。清水さんとのことも公になると、私とのことからまだ日が浅いし」
「だから、言ったろ。転職も覚悟のうえだ。とはいえ、俺の営業成績を捨てる覚悟がこの会社にあるかねえ?」
「ふふ。確かに。仕事も出来て食いしん坊な春樹を好きになったんでした」
「やめろよ、過去形。マジうざい」
そんな顔を見て、また吹き出して笑ってしまった。
話せてよかった。春樹の顔を正面から見られるようになった。そして、彼を好きだったことを良かったと思えるようになった。
でも取締役の話は……気をつけよう。
秘書として大切にされていることは口に出してくれているから知っていた。春樹にそんなことしていたなんて……。
表の顔と裏の顔。公私で別な顔がある人?考えると寒気がした。