君がたとえあいつの秘書でも離さない
再会
とうとう、匠さんと食事の日が来た。
時間ギリギリに仕事を終え、約束の時間制駐車場へ行った。
白い指定のセダンが止まっている。
私の姿を見て、運転席から出てきたのは初老の男性だった。
「古川遙さんでしょうか?」
「はい」
「私は、匠様の運転手をしております、柿崎と申します」
そう言うと、お辞儀して後部座席を開けてくれる。
車に乗ると、バックミラーを見ながら私に話しかけてくる。
「ご心配でしょうから、私の話をしておきます。私は、匠様のお小さい頃からお世話をしていたものです。妻はお屋敷住み込みで匠様の乳母もしておりました。おこがましいですが、私にとって匠様は息子同然、それ以上です。ご安心ください」
そうだったのか。それは、身内同然だわ。
「こちらこそ、初対面なのにご丁寧にお話頂きありがとうございます」
遅くなるので出しますねといいながら、運転しながら話してくれる。