君がたとえあいつの秘書でも離さない
 
 今更、何。
 ここでイヤって言って、直也さんという人、原田取締役の取引先だったら無下にも出来ないでしょう。
 
 私もため息。小さく頷いて、返事する。

 「では、どうぞ」
 
 止まったエレベーターに率先して入っていく直也さんは扉を押さえて待っている。
 皐月と一緒にエレベーターへ乗り込む。
 
 男性用のすっきりした香水の香りがする。
 後から、匠さんも入ってきた。

 二人とも背が高い。180センチくらい?私の担当石井取締役より背が高い。
 私は160位だけど、皐月は165くらいはある。
 並んで丁度いいくらい、ヒールのある靴を履いてる。

 チンという音と共に、扉が開いた。
 毛足の長いジュータンにヒールが取られそうになった。

 すると、すっと横から手が伸びてきて、私の腕をつかんだ。
 
 「失礼」
 
 低い声で匠さんがそう言うと、私の腕をすぐに放した。

 顔を見上げて匠さんと目が合う。
 
 鼻筋のすっと通った顔に一重の目が私を見る。
 
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