君がたとえあいつの秘書でも離さない
 
 「どうした?」
 
 「いいえ。久しぶりだけど、相変わらずかっこいいなと思って」

 「君も素敵だよ。そのワンピース、君にとても似合う色だ。しかも今日の俺のネクタイと同系色。偶然でも、嬉しいよ」

 そうなの。ブルーの色。まるでペアみたい。

 「君の僕を真っ直ぐ見つめるキラキラした瞳を見ると心臓がドキドキしてくるよ。吸い込まれてしまいそうで……最初に会った時もそうだった。話していると君の中に引き込まれて……忘れられなくなった」

 匠さんが、口元を押さえて横を向く。耳が赤い。
 近づいて、正面から匠さんの目を覗き込む。

 「どうですか?ドキドキします?」

 「……遙。だから俺を煽ってどうする気だ。そんな小悪魔ぶりは俺だけにしろよ。他の男の目を覗いたら許さない」

 私の膝を軽く叩く。

 「私、小悪魔だったんですね。知らなかった。言われたことないもの。だからそんなつもりじゃありません」

 こちらまで恥ずかしい。

 美味しい料理が運ばれはじめた。あれ、全部運ばれるの?
 
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